小さな恋、集めました【短編集】
片想いの彼
【夏休み】
うだるような暑さに煩いセミの声。
夏だ。
……だというのに私は一体なんで学校へと向かっているのだろう。
せっかく整えた前髪も吹き出す汗の前には為す術なく、かけた時間と労力を嘲笑うかのようにぺっとりしている。
これも全部補習のせいだ。
夏休みの一週間、これが続くなんて考えたくもない。
でも教室に入ればクーラーが効いているはずだ。
それまで我慢。なにも楽しくない補習だけど、頑張れ私。
「おっ、はよ!」
やっと日差しを避けれる昇降口に入った途端、突然の挨拶が降ってきた。
「えっ! お、おはよ」
そこに居たのは、絶賛片想い中のアイツ。
「お前も補習?」
「うん、お互い大変だね!」
「だな! でもお前が居て良かったよ! 頑張ろうな」
「へっ!? が、頑張ろうね!」
暑さとは別に顔が熱くなるのがわかる。
なにも楽しくない補習、のはずだったけれど。
なんだかちょっと最高な夏休みになりそうな予感。