小さな恋、集めました【短編集】
大好き
【ヤンデレ】
好きだった彼に振られた。
「うっ……ぐす…」
理由はわからない。
側から見てもラブラブで、うまくいってると思ってたのに。
「ひどいよぉ……」
もう生きていたくもない。
握ったフェンスから無機質な音が響き、冷たい感覚が伝わってくる。
下を向けば、遥か遠くに見える地面。
これを越えてしまえば、落ちてしまえば。
全て忘れられるのだろうか。
全体重をかけられたフェンスからガシャガシャと激しい音がする。
よじ登って向こう側へ辿り着き、下を見ればつい足がすくんだ。
……さよなら。
いざ一歩足を踏み出そうとした、その瞬間。
ぐいっと腕を引かれ、気づいた時には目の前に彼の顔。
「ごめん、別れるのやめよう」
彼がなぜここにいるのか、ならばなぜ別れようと言ったのか、そんな疑問は全て吹き飛んだ。
「うんっ!」
だって彼がいる。それだけでこんなにも嬉しい。
「最期が俺のせいだなんて、最高だった」
彼がぼそりと呟いた声は、私には届かない。