小さな恋、集めました【短編集】
ある冬の日
今から帰り? 私も!
偶然を装って一緒に帰るために何回も練習した台詞。
それもこれも帰りが遅くなったせいで活用の場は無くなってしまったけれど。
靴を履き替え外に出ると、白い溜息が漏れる。
「お、今から帰り?」
「……は!?」
思わず驚いた。
だってそこにいたのは、一緒に帰りたかったアイツで。
「おっせーよ」
笑いながら話しかけてくるアイツに思わず幻かと疑ってしまう。
「な、なんでいるの」
「偶々遅くなったから」
「……鼻、赤いけど」
「元々赤いし」
「……ふふ。ありがと」
「別に」
そういってそっぽを向くアイツにじわりと胸が暖かくなる。
2人して顔が赤いのは、きっと冬のせいだろう。
「……思ったより遅くて寒かった」
「急に素直になるじゃん」
「風邪ひいたら俺バカじゃね?」
「そしたら責任取るよ」
「……風邪ひきたくなるからやめて」
「明日会えないのは寂しいなぁ」
「……絶対ひかねぇわ」