小さな恋、集めました【短編集】

【風邪】に続く話 〜side彼〜


からりと扉を開ければ、保健室独特の匂いが鼻をくすぐる。


先生は不在らしく、仕方ないので勝手にベッドへと続くカーテンを開けさせてもらった。



赤い顔に荒い息。

拝借したタオルで汗を拭いてやれば、布越しに伝わる熱さについ昔を思い出す。


男のダチとばかりつるむようになってからは話すことも少なくなっていった。


それでも身体は正直で、目はいつもあいつを追っていて。



今日だってそうだ。

元気がなさそうだと思ってたら保健室に行ったことを聞かされ、いてもたってもいられなかった。


ずっと側で手を握っていると、先生が戻ってきた。


その頃には随分と熱は下がっており、家が近いと言えば快く帰宅の許可が下りたので、荷物ごとあいつをおぶる。


昔もよくこうやって家に送り届けていた。

特に今日みたいに寒い日に。


「……相変わらずこの時期に弱ぇのな」


さっ、帰るぞ。

誰ともなく呟いた言葉は白いもやとなって消えていった。

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