小さな恋、集めました【短編集】
イジワルな彼
【エイプリルフール】
「ごめんって怒んないでよ」
「怒ってねぇよ」
怒ってるじゃん。
事の発端は、「あんたのこと、今好きになっちゃった」という私の言葉。
それが11時59分。
そのあと12時ぴったりに、「エイプリルフールだよ!」と言ったっきり、むっすりと喋らなくなってしまった。
「流石に反省してるから」
だから、きげんなおしてよ。
暗にそう言えば、だから怒ってねぇってと柔らかい声が返ってきた。
ちらりとこちらを向くあいつ。
その口の端が、わずかににやりと吊り上がる。
「お前が好きだ」
どきりと胸が鳴る。
「嘘ついていいのは午前中までらしいよ」
そう言った私の声は震えてないだろうか。
「知ってる」
だから、これは。
「ほんとのことだよ」
「……うぅ」
「なんだよ」
「……私も、すき」
「嘘じゃなかったのか?」
「今っていうのがうそ。ずっと前から好きだった」
なんだそれ。
そう言って笑うきみがすき。