小さな恋、集めました【短編集】
噂とラブレター
【告白】
「好きな人がいるって本当?」
風の噂で耳にしたことを告げると、目の前の彼は目をぱちりとさせて朗らかに笑った。
「本当だよ」
「聞いてない」
「言ってないもん」
許して?
そう言って私の目を見つめてくる。
その目が、苦手だ。
まるで彼を好きなことを。全てを見透かされそうで。
「……それ、何書いてるの」
彼の瞳から逃れるように、彼の手元でなにやらさらさらと書かれ始めた紙に視線を落とす。
「ラブレター」
「……そう」
一瞬、反応が遅れた。
「ほら」
差し出されたそれは、確かにラブレターで。
『好きだ』
なんて、誰に対しての言葉なのよ。
「やる」
思わずくしゃりと握り潰しそうになったそれをするりと奪い返され、また私の手元に戻って来た時にはさっきまでは無かった文字が。
『お前が好きだ』
「……聞いてない」
「……まだ言ってないもん」