これを愛というなら~SS集~
「料理長が、俺に認められたいんだろって言ってくれて……いい女を見つけろって言ってくれて……踏ん切りが漸く、付いたんだ」


そう……と呟くように返して、顔を上げるとテーブルに頬杖をついて……私を見つめている、真ん丸な二重の瞳に捕らえられた。


そしてーーー私の口から溢れた、自分でも驚きな言葉。


坂口くんの手で女にしてよ?

いい女になれるように愛してよ?

忘れさせてよ!

もうお願い………

料理長が一度だけ見せてくれた笑顔を思い出して、毎晩のように泣きながら眠る日々は……疲れた……

周りは結婚して、子供だっている。

そんな中で、私だけまだ誰のものでもなくて……取り残されてる感じは、とてつもなく虚しい。

こんな想いからも解放して。


涙を流しながら、またテーブルに突っ伏して伝えていた。



「本当に俺でいいの?俺は、島田さんが俺なんかで楽になれるなら……構わないけど」


「……わからない……だけど……坂口くんが初めての相手なら後悔はしない」


そうよ!

この純粋な心で、はじめてを奪ってくれるならいい。


「わかったよ。明日は休みだから……行こうか?」


「どこに?」


恋愛経験のない私からすれば……大体の想像でしかない。


「どっちがいい?狭いけど俺の部屋かホテルか」


やっぱり、その二択なんだ。

付き合うことになれば、坂口くんの部屋にはそのうちに行くよね。

だったら……最初はシーツを汚したくないし……迷惑かけたくないし……


ホテルがいい。
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