これを愛というなら~SS集~
料理長にLINEを送ると、いつでも来い、と店の住所も一緒に返信をくれてーー、
定休日に料理長の店を訪れた。


当然…ー倉本さんも居たんだけど、相変わらずの料理長とは仲の良さ。

一部始終を話してる間も時々、話を聞いてくれながら瞳を合わせていて、足を組んでいる料理長の太腿の上で、指を絡めて手を繋いでいる。



「最低な酷い継母だな。俺なら口車に乗ったと見せかけて、叩き潰す」


「俺には……出来ませんよ。料理長と同じことは……」


そう答えると、もう料理長って呼ぶの止めようぜ?

お前の上司でもねぇよって言われてしまい、蓮さんでいいですか?

それでも構わないよ、と微笑んで。


出来ないなら……今の旦那さんに全てを話せば、話は早いだろ?

島田の父親を騙して裕福な暮らしをして、今は社長になった旦那さんを騙して裕福な暮らしをしてんなら、それを奪っちまえばいいんだよ。

それで、上手くいかなかったらまた相談しに来い。

力を貸してやる。



そうかっ!

思い付かなかった訳じゃない。

俺は、蓮さんに話して自分の解決策は間違いじゃないと、確信を持ちたかったんだ。

そして、力を貸してやるって言葉が欲しかった。


「まずはね……島田さんに話をしてあげて。話すだけでも安心するから。蓮はいつも話してくれたから安心できた。守ってくれるって、助けてくれるって思えた」


今まで、黙って聞いてくれていた倉本さんの言葉に、話すって意味の深さを知った。

黙っていたら、余計に不安にさせる。

傷つけて悲しませるだけ。


「ありがとうございました。二人に聞いてもらえて良かったです。今度は、環奈とご飯食べに来ます!」


待ってるぞ、待ってるわね、と言ってくれた二人にー…ー、

コーヒー代と財布を出すと、気にすんな、と。

ちょっと待って、と倉本さんが、島田さんが好きなチョコレート、と。

環奈が繁忙期には、いつもチョコレートを食べてるのを知ってくれていたんだろう。

確かに、環奈はチョコレートをいつも冷蔵庫に入れている。

大好きなの、って。


綺麗な包みは、来た時に俺に渡そうとわざわざ買いに行ってくれたらしい。

相変わらず、倉本さんは気が回る。


ありがとうございます、と。

喜びます、と頭を下げると。

またな、またね。

二人は店の外まで見送ってくれた。
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