これを愛というなら~SS集~
「身体は蹴られたりしてない?」


車から桃子を抱えて、部屋に入ってからベッドに座らせて訊くとーーー蹴られてない、と。

顔を何度か平手打ちされただけ。

そっか……良かった。

少し頬が赤くなって腫れてる。


「熱さまシート貼っとこうな」


帰りに念のためにと色々と買った中の、それを桃子の左右の頬に貼ると……怖かったよ、と。

たくさん身体……汚された……

気持ち悪い液体を……たくさん……呑まされた……苦しかったよ……

痛かったよ……


俺の手を強く握り締めて、必死に何時間もの辛かった事を話してくれた。


「ごめん……やっぱり一緒に行けば良かった……」


「私が、悠馬が着いてくるって言ってくれたのに……断ったの……謝らないで?助けに来てくれたし……」


「うん……助けるのは当たり前。あとは兄貴達が片付けてくれるから、もう付き纏まれることもないよ」


兄貴たち?と、首を傾げれて、まだ話してないことに気付いて……

俺の生い立ちと、今は余り関わりがないこと。

だけど、桃子を助けるために力を借りた事を話した。


驚いていたけれど、生い立ちとかどうでもいいって。

優しくて甘えてくれる、甘えられる悠馬を好きになったんだから。

そう言ってくれた時ーー長兄からの着信。


『彼女は大丈夫か?』


「大丈夫だよ。ありがとう。あいつらは?」


『今、家の離れで縛り上げてる。近いうちにお前も来るか?』


「うん、行くよ!今日はありがとう。親父にも顔出すって言っておいて!」


わかった、と長兄の返事の後に、電話を切った俺を桃子が見つめていた。


近いうちに桃子の分まで、お仕置きしてくるからね。

そう伝えて、頭を撫でると……小さく頷いて……


「お願いがある……悠馬に綺麗にされたい……」


汚くないのに……綺麗なままなのに……

今のままでも何にも変わらない桃子なのに……

桃子からすれば、全身が気持ち悪いんだろうな。

気が済むなら……俺の手で。


「お風呂で俺が隅々まで、洗ってあげる」


桃子の身体を撫でるように洗いながら、身体に傷や痣がないか確かめると……手荒にされたのか、膝に擦り傷。

強く痛いくらい掴まれたんだろう、腕には掴まれ跡。

脇腹にも痣がある。

胸には……赤い跡。

俺があいつらにも、同じ場所に痛みを味わわせてやる!


気にしなくていいのに……いつもより入念に歯を磨いていて……


辛かったよな、痛かったよな。

苦しかったよな、気持ち悪かったよな。


全部全部、俺が時間をかけて忘れさせてあげる。
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