1分で読める初恋短編集
3:少し違うかもしれない
思春期特有のとがった思考のせいか、私は恋愛することを全力で拒否していた。
中学2年になってもそれは変わらず、このまま一生そうなってもいいとすら思っていた。
男子は野蛮で不潔。
それは間違ってない。
そんな、怒りにも似た感情を内に秘めて学校生活を送っていたある日のことだった。
放課後、先生に呼ばれて雑務をこなした私はカバンを持って帰るために教室に戻った。
そこにいたのは、涙を流しているタカハシ ルイの姿があった。
別に深い知り合いではない、ただの1クラスメイトだった。
でも、泣いているからには理由があると思って声をかけたら、見られていたことを初めて自覚したみたいで、涙を拭いて笑って「なんでもない」とごまかした。
でも、理由はバレバレだった。
彼の手元には本があって、それは「泣ける」と評判のものだった。
あまり本なんかは読まなさそうな彼が、その本に惹かれたことが気になった。
「流行ってるから……っていって読んでみたらすごくよくてね。つい泣いちゃったよ。ただそれだけ。男子が泣くと弱い者扱いされるから、コバヤシさん、黙っててよ、お願いだから」
「別にばらしたりはしないよ。じゃあ、たまたま本を読んだだけなんだ」
「うーん、意外と読むけどね。流行りのものは久しぶりに読んだかな。いつもは文豪のやつとか海外のやつ読むことも多いよ」
「意外だね、なんか」
「あんまり人には言わない趣味だよ。コバヤシさんは何か読む?」
「タカハシ君には敵わないけど、ぽつぽつは読むかな」
「じゃあ今度、お気に入りの小説交換しようよ。あんまり周りにいないからそういうことできないんだよね」
「別にいいけど……」
「じゃあ、明日に持って来て……そうだな、お互いの机の中に入れておこうよ」
「いいよ」
タカハシ君はそれを伝え終えると、さっさと帰って行った。
去り際に「なんか仲間ができたみたいで超うれしいな」と言った横顔が私の瞳に張り付いた。
家に帰り、本棚を漁りながら彼が喜びそうな本を探す。
いつの間にか鼻歌を歌いながら、顔がほころぶ。
悪い気なんてしなかった。
でも、浮足立って喜ぶ自分に言い聞かせた。
「これはただ読書仲間ができたのがうれしいだけ、それだけ」
言い聞かせないと、いけなかった。
だって、あの人の去り際の顔を見てから、なんだか顔の火照りと心臓の音が早くなっているのを自覚したから。
男子は嫌い。
不潔で野蛮だから。
でも、あの人は……ちょっと違うかもしれない。
中学2年になってもそれは変わらず、このまま一生そうなってもいいとすら思っていた。
男子は野蛮で不潔。
それは間違ってない。
そんな、怒りにも似た感情を内に秘めて学校生活を送っていたある日のことだった。
放課後、先生に呼ばれて雑務をこなした私はカバンを持って帰るために教室に戻った。
そこにいたのは、涙を流しているタカハシ ルイの姿があった。
別に深い知り合いではない、ただの1クラスメイトだった。
でも、泣いているからには理由があると思って声をかけたら、見られていたことを初めて自覚したみたいで、涙を拭いて笑って「なんでもない」とごまかした。
でも、理由はバレバレだった。
彼の手元には本があって、それは「泣ける」と評判のものだった。
あまり本なんかは読まなさそうな彼が、その本に惹かれたことが気になった。
「流行ってるから……っていって読んでみたらすごくよくてね。つい泣いちゃったよ。ただそれだけ。男子が泣くと弱い者扱いされるから、コバヤシさん、黙っててよ、お願いだから」
「別にばらしたりはしないよ。じゃあ、たまたま本を読んだだけなんだ」
「うーん、意外と読むけどね。流行りのものは久しぶりに読んだかな。いつもは文豪のやつとか海外のやつ読むことも多いよ」
「意外だね、なんか」
「あんまり人には言わない趣味だよ。コバヤシさんは何か読む?」
「タカハシ君には敵わないけど、ぽつぽつは読むかな」
「じゃあ今度、お気に入りの小説交換しようよ。あんまり周りにいないからそういうことできないんだよね」
「別にいいけど……」
「じゃあ、明日に持って来て……そうだな、お互いの机の中に入れておこうよ」
「いいよ」
タカハシ君はそれを伝え終えると、さっさと帰って行った。
去り際に「なんか仲間ができたみたいで超うれしいな」と言った横顔が私の瞳に張り付いた。
家に帰り、本棚を漁りながら彼が喜びそうな本を探す。
いつの間にか鼻歌を歌いながら、顔がほころぶ。
悪い気なんてしなかった。
でも、浮足立って喜ぶ自分に言い聞かせた。
「これはただ読書仲間ができたのがうれしいだけ、それだけ」
言い聞かせないと、いけなかった。
だって、あの人の去り際の顔を見てから、なんだか顔の火照りと心臓の音が早くなっているのを自覚したから。
男子は嫌い。
不潔で野蛮だから。
でも、あの人は……ちょっと違うかもしれない。