1分で読める初恋短編集
5:臆病な私
「ちぃ、じゃあな」
 カツミが手を振ってくれたので、私はいつものように手を振り返した。
 けれど、その後にカツミが隣にいる彼女に向かって微笑みかけたのを見て、胸に痛みが走った。

 ずっと昔からいて、幼馴染だったから自分の胸の中にある好意を言わずにいた。
 だって、この関係は言わなくても恋に発展していくと思っていたし。
 でもそのせいで、カツミは私のことを女の子として見なかった。
 その時初めて、私の初恋は終わったのだと思った。
 臆病だった私の、つぼみのままで終わった初恋。
 この痛みは、いつになったら取れるのだろうか。
 そんなことを考えながら、私は空を向いた。
 涙がこぼれないように。
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