1分で読める初恋短編集
6:放つ言葉
「タカナシくんのことが好きなんです」
 この言葉を相手に伝えるために、私はどれだけの恐怖と戦ったのだろう。
 もしダメだったら?
 そんなことを考えるだけで、喉にひっかかって出て来なくなる。
 だけど、今日はそれを振り切って言うことができた。

 いや、鏡に向かってなんですけどね……。

 何度目のリハーサルを重ねてやっと言葉に出せた。
 これが本番だったら、どうなるんだろうか。
 そんなことを考えながら、学校に行く準備を始める。
 卒業までに時間はある。
 それまでに言えたらいいな、と思う。
 だけど、いっそ「このまま」を維持してもいいのかと思ってしまう自分もいる。

「いってきます」

 ドアを開けていつもの日々を始める。
 今日もタカナシくんに会える日なのだと思いながら。
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