占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
占いお宿の日常
「ドリー、おはよう」
「ああ、おはよう」
朝早く、店の準備に取りかかる私、ライラ・ガーディアン。ドリーが女将をしている、このどこの国にも属さない緩衝地帯の森の奥の宿屋で、占い師兼従業員として働きはじめて1年半以上が経った。
「グノー、おはよう」
「ん」
厨房を担当する、アライグマの獣人グノーは、相変わらず口数が少ないけれど、私にすっかり気を許してくれている。
「あっ、ミランダ。おはよう」
「あら、ライラ。おはよう」
元魔女のミランダは、ちょっとばかり悪さをして、その魔力を失ってしまった。以来、この宿屋で働いている。
「まあ、ライラ。少しぐらいお化粧するべきよ」
そういうミランダは、まだ早朝5時半にもかかわらず、ばっちりと化粧が施されている。真っ赤な口紅が、美人な彼女によく似合っている。
「あはは。無駄よ無駄。清潔にさえしていれば、飾る必要なんてないわよ」
「はあ……」
〝もったいない。行き遅れるわよ……あっ、嫁ぎ先は決まってたわね〟なんて小さくこぼすミランダの言葉は、都合よく私の耳には入ってこない。シャットアウトする術は、もうとっくに得ている。
「ああ、おはよう」
朝早く、店の準備に取りかかる私、ライラ・ガーディアン。ドリーが女将をしている、このどこの国にも属さない緩衝地帯の森の奥の宿屋で、占い師兼従業員として働きはじめて1年半以上が経った。
「グノー、おはよう」
「ん」
厨房を担当する、アライグマの獣人グノーは、相変わらず口数が少ないけれど、私にすっかり気を許してくれている。
「あっ、ミランダ。おはよう」
「あら、ライラ。おはよう」
元魔女のミランダは、ちょっとばかり悪さをして、その魔力を失ってしまった。以来、この宿屋で働いている。
「まあ、ライラ。少しぐらいお化粧するべきよ」
そういうミランダは、まだ早朝5時半にもかかわらず、ばっちりと化粧が施されている。真っ赤な口紅が、美人な彼女によく似合っている。
「あはは。無駄よ無駄。清潔にさえしていれば、飾る必要なんてないわよ」
「はあ……」
〝もったいない。行き遅れるわよ……あっ、嫁ぎ先は決まってたわね〟なんて小さくこぼすミランダの言葉は、都合よく私の耳には入ってこない。シャットアウトする術は、もうとっくに得ている。
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