占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
「操るっていっても、違う。ハーピーは、ちょっとした旨味を提示してやれば、従順に従うぞ。とはいえ、知能は低くとも、ハーピーも相手を選ぶ。簡単にいえば、魔女が相手なら確実に従う。長い歴史の中で、ヤツらの魔女に対する信頼は大きいからな」

「へえ……」

魔女は必ずしも善人ばかりじゃない。むしろ、自分の欲求に忠実な傾向がある。それでも魔女を好むだなんて、ハーピー恐るべしだわ。

「ということは、やはりマリアーナが幼い頃に彼女の色を変えたのは、魔女が関わっているので間違いなさそうだな」

ルーカスの言葉に、少しだけ考えを巡らせたドリーが、ゆっくりと口を開いた。

「……心当たりが、ないわけでもないな」

ドリーとしては、珍しくすごく歯切れが悪い。それは、ルーカスも感じたようで、探るようにドリーを見ている。

「なにか、知っているのか?」

3人の視線がドリーに集まる。歯切れが悪かったとはいえ、ドリーはドリーだ。いつも通り、堂々と私達を見回してくる。

「わしの……娘かもしれんな」

「「「娘!?」」」

3人の叫ぶような大声が重なる。
ドリーが魔女の国マージュミアルの王女で、力のある魔女だってことは知っていたけれど、まさか娘がいたとは……
心のどこかで、ドリーは結婚なんてしてなくて、一生独身を貫いているなんて、勝手なイメージを抱いていただけに、あまりにも予想外な告白だった。

「ド、ドリー。あなたの娘っていうことは、つまり、その人もまた、マージュミアルの王女ってことじゃないの?」

ドリーが、いつどこで娘を授かったのかはわからないし、相手も未知数だけれども、母親がドリーである以上、その娘もまた王女であるはず。




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