占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
「いや。娘といっても、あの子は……ローラは、わしとの血の繋がりはない。実の両親が誰なのか、その所在も不明。生まれてすぐ、捨てられていたところを、わしが保護した」

「捨て子……」

「ああ、そうだ。拾ったからには責任が生じる。自分の娘として育てることにした」

ドリーは淡々と語ってるけれど、聞かされたこちらはついていくので精一杯だ。

「ドリー。それはもしかして、ここで拾ったということですか?」

ジャレットがなにかを察したような表情をしている。

「そうだ。ローラはこの宿屋で育った。今は……25歳ぐらいだろうか。彼女にはかなりな魔力があると、一目でわかった。ハーピーを操ることはもちろん、できるはずだ。それに、色を変えることは、わしが教えた、ローラのもっとも得意とするものだ」

ドリーはマリアーナの話を聞いて、もしかしたらたらと、ずっと考えていたという。

「ローラはどうして、ここを出ていったの?」

「本心は、本人にしかわからんが……ローラが出ていったのは、彼女が16歳になった頃だ。それまでのほとんどの時間を、ここで過ごしていたローラだったが、〝世界を見たい〟と言い出してな。彼女ほどの力があれば、困ることも危険もなかろうと送り出してやった。心根の優しい子でな、外の世界に満足したら、いつか必ず、ここへもどってくると言っとったな」

16歳の頃にここを出たというのなら、ローラは約9年もの間もどってないことになる。果たして、本当にもどる意思はあるのだろうか?ルーカスもジャレットも同じことを思ったのか、若干気まずそうにしている。




< 106 / 156 >

この作品をシェア

pagetop