占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
* * *

「失礼する。グリージア王国から、アルフレッド殿下の使いで参りました、アンディと申します。ルーカス・サンミリガン様はおられますでしょうか?」

突然の訪問に、呆気にとられてしまった。

「俺が、ルーカスだが」

例の如く、休憩時間であろうと営業時間であろうと、関係なく食堂に居座り続けていたルーカスが声を上げた。
さすがに、国家間のやりとりをここでするわけにはいかない。ルーカスの部屋に行くよう促した。
が……

「ここでいい。ライラやドリーにも知っておいてもらった方がいいだろう」

アンディの方も何も言わないところを見ると、おそらくアルフレッドによって、私やドリーのことも話が通っているのだろう。


「アルフレッド殿下からの言付けです。現在、グリージア王城付近で、頻繁にハーピーの出現が確認されています。攻撃してくる様子はなく、とにかくこちらの様子を伺っているようです」

「シュトラスからの侵入者は?」

「王都で身を潜めつつ、やはりこちらの動きを探っているようです」

「そうか。シュトラス王国からの接触は?」

「今のところありません」

さすがに、他国の城にまでは手を出せないのだろう。それよりも、完全にマリアーナの居場所がバレてしまっているということか。父の居場所から城まで無事に移動できたのは、間一髪だったのかもしれない。アドルフのおかげね。



「すみません。マリアーナの様子を伺っても?」

身柄の無事がわかった今、気がかりなのは心の方だ。せっかく宿屋で働くようになって生き生きしていたのに、このことがきっかけで、また内向的になってしまったら可哀想だ。

「マリアーナ様ですが、現在クリスティアナ様が里帰りなさっていまして、時間を持て余す暇もないほどと言いますか……」

アンディの言葉尻がもごもごしてしまう理由は……うん。私にもよくわかる。





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