占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
「信じてください。この子は、紛れもなく陛下のお子です」

「では、なぜその色なんだ!!」

再び場面は変わり、言い合う2人の男女を映し出した。王女の父親である国王と、母親の王妃なのだろう。王妃は涙を流しながら、必死に訴えている。それに対して、国王の方は険しい表情のまま、声を荒げている。どこか悔しそうで、どこかやるせないその表情は、まるで私に婚約破棄を突き付けた時のアルフレッドのようだ。

それにしても、〝その色〟ってなんのことだろうか?


その後に見せられた場面で、王妃はすっかり表情をなくしてしまっていた。かろうじて、赤ん坊と接する時だけは笑みを浮かべているものの、それ以外の時は心ここに在らずのように見える。
狭く質素な部屋で、赤ん坊と王妃と乳母の3人だけの場面が続く。そこへは時折、王子が訪れる。王子には護衛が1人付けられているようで、彼の後ろに常に控えている男がいた。名前はヨエル。20歳前後だろうか。一目で鍛え抜かれていることがわかる。ガッチリとした体付きに、金色の短髪。その瞳は青みを帯びた紫色で、厳つい体躯の彼には、些か綺麗すぎるようにも思えた。

王妃と王子が、共にブラウン系の髪と瞳と、落ち着いた色味なだけに、ヨエルの外見は何かと目が惹きつけられてしまう。
この2人がやって来ると、王妃も少しだけリラックスしているようだ。


「母上、マリアーナは?」

人差し指を口の前に立てて〝静かに〟と促された王子は、〝しまった〟という顔をした。どうやら、妹の名前は〝マリアーナ〟というらしい。

「見てもいいですか?」

小声に尋ねる王子に対して、王妃は〝もちろん〟と微笑む。そばに控えていた乳母に促された王子は、マリアーナの眠るベッドをそっと覗き込んだ。

「可愛いなあ」

すっかり目尻を下げたその顔は、妹のことが大好きだと物語っていた。我慢しきれなかったのか、人差し指で思わず頬をつつく様を、乳母が微笑ましく見つめている。



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