占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
* * *

「おい、どうしてまた男なんだ!!」

「仕方がないだろ」

やんごとなき2人が不機嫌な理由は、ズバリ私の目の前に座る男性、ウォルター・ローズベリーが原因だ。ウォル兄様は長身で容姿の整った男性で、やたら女性の視線を集めてしまう。見た目通りの穏やかな性格だけれども、頭の回転が速く、容姿に似合わず強かな一面もある。決して敵に回したくないと密かに言われていることは、私でも知ってる。

「ウォル兄様。お久しぶりです」

「セシリア。少し会わないうちに、綺麗になったなあ」

「あっ、おい、こら!!」

同席は許した。けれど、せめて少し離れてという私の言葉になんとか従ったルーカスは、席一つ開けた隣に座っている。これは離れたというのだろうか?そして、その横にはアルフレッドまで……

「なかなか……愉快な知人だな」

「え、ええ。まあ、いろいろとあって……」

「とにかく、心配していたけれど、セシリアが元気そうで安心したよ」

今思えば、もう少し根回ししてから家を出るべきだったかもしれない。自分の突発的すぎる行動に、申し訳なくなってくる。

「どうぞ」

そこにミランダがお茶を運んできてくれた。のけぞるルーカスとアルフレッドをちらりと一瞥したミランダ。珍しく2人を揶揄うことをしない。

「ありがとうございます。お名前を伺っても?」

私がお世話になっているという思いからなのか、ミランダがにお茶を置くと、ウォル兄様はさっと立ち上がって手を差し出した。

「ミランダと申します」

「ミランダ……セシリアがお世話になっております。私は彼女の従兄弟で、ウォルター・ローズベリーと申します。お見知り置きを」

「まあ、ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、彼女には助けられてばかりなんですよ」

なに、このむず痒い笑みは……
まさかと思うけど、お兄様……
ちらっと二人の表情を見て、なんとなく、先日の占いの答えを察してしまった。同席していた父までも、2人の様子を興味深そうに見守っている。
ウォル兄様は、ミランダにもそのまま同席するように椅子を勧めた。なんだろう、この面子は……



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