鬼の棲む街
嫌な予感は当たるもので
この酔っ払いは騒がしい合コンのメンバーだったようだ
声に釣られて同じ酔っ払いが四人ゾロゾロとやってきて、あっという間にテーブルは囲まれてしまった
・・・最悪
「こっちの方が良かったなぁ」
「なに?ここ、モデルさんの宴?」
酒臭い五人から出される内容が軽すぎて視線を合わせる気すら起こらない
ただ・・・
この人達と合コンしていた女の子達も騒ついていて他の客の視線まで集めていることは確かだった
・・・もう帰りたい
さっきまでの楽しかった時間が台無しだ
そう思った途端に
「お客様!」
酔っ払いの背後から声が聞こえた
「あ゛?」
そこには、ノリのいい店員さんが立っていた
「困りますねぇ、他のお客さんに絡んでもらっちゃ〜」
口調は緩いままなのに明らかに纏う空気が違って酔っ払い達も黙ってしまった
「俺の機嫌の良いうちに良い子で席に戻らないと出禁だけじゃ済まないよ?」
底冷えするような冷たい視線に居た堪れなくなったのか酔っ払いはゾロゾロと退却して行った
「ごめんね〜、怖かったんじゃない?」
視線を順番に合わせながら、さっきとは真逆の雰囲気を出す店員さんに
「・・・大丈夫」
気づいたら答えていた
「じゃあ、ここで提案ね〜!
今夜は僕の奢りにしちゃうから、これに懲りずにまた来て欲しいな」
人差し指まで立てて可愛く微笑む店員さん
「奢ってもらわなくても、また来るつもりだったし見知らぬ人から借りは作りたくないわ」
意外にもそう言ったのは紗香だった