鬼の棲む街



「で」


「ん?」


「何を食べに連れて行ってくれるの?加害者さん?」


「子猫ちゃん。それはないぜぇダーリンって呼んで〜」


繋いだ私の左手を持ち上げて手の甲に口付ける巧が動くたびにスパイシーな香りが立って


「ちょ、なにすんのよっ馬鹿っ」


急いで抗議していると


「巧、手ぇ出すな」


右側から尋が加勢する


「良いじゃねぇのよ減るもんじゃなし」


全く反省する気もない巧と繋いだ左手をサッと抜くと


「馬鹿巧とは繋がな〜い」


エントランスを抜けて外に出たタイミングで外した手をヒラヒラと振ってやった


「嘘嘘ごめんて、子猫ちゃ〜ん」


ご機嫌を取るように追いついてきた巧に顔を覗き込まれて堪らず吹き出した


「仕方ないわね、次やったら許さないんだからねっ」


巧を見上げて頬を膨らませる


「子猫ちゃんの仰せのままに」


胸に手を置いて小さくお辞儀する巧は多分反省なんてしてなくてきっとまたやるはず

でも、なんだか楽しい双子とのやり取りにクスクス笑いながら許してる私


「てか、街の女の欲しいもん手にしてんのに、つれない女を初めて見たわ」


右側の尋はしみじみと私を見下ろすと頭をポンポンと撫でた


「欲しいもの?」


「あぁ」


「それは尋と巧のこと?」


「俺達の視界に入りたい。話したい。触れたい。抱かれたい」


「へぇ」


「そいつらは馬鹿とか加害者なんて酷いこと言わねぇし繋いだ手を離したりしねぇだろうな」


「Dragonに溢れてた頭もお尻も軽そうな子達のことね」


「もちろん小雪じゃなきゃ相手にはしねぇがな」


「あら?私が特別みたいに聞こえるけど?」


「当たり前じゃねぇの。子猫ちゃんは特別だよ」


尋との会話に巧が割り込んできて

ただ歩いているだけなのに思いのほか楽しんでいた私は





南の街で有名な双子に挟まれて歩いたことが


ある人物の中に嫉妬の火を灯してしまっていたことを知らない












< 71 / 205 >

この作品をシェア

pagetop