鬼の棲む街


「んなの認めねぇ」


「サヨナラとか簡単に言っちゃうんだ」


「大丈夫、一生の記念にするつもりよ?だって、ヤクザと関わるなんて稀じゃない?」


言いながらフフフと笑う


「明日からは街ですれ違っても全くの他人だからね」


「そんなバッサリ、冷たい」


「冷めた女」


「フフ、褒められた」


「「褒めてねぇ」」


「さすが双子ね、息がピッタリ」


「茶化すな、認めねぇからな」


隣から冷たいビームを放つ尋はお箸を置いて身体ごと私に向いている


「子猫ちゃんよぉ、考え直そうぜ?
他の女達からの嫉妬なんて、俺達が完璧に守ってやれるし
そしたら波風なんて立たないっしょ
杉田の店だって命の恩人への感謝の形なら尚更断るなんて言えないぜ〜?」


緩い喋り方なのに内容は一々的を射ていて困る


「なんなの?必死すぎない?二人共
もしかして私のこと好きだとか言わないよね?」


「えぇ〜気付いてなかったの?俺、子猫ちゃんにゾッコンよ?」


巧は綺麗に片目を閉じた


「は?」


「俺も好きだぜ?」


尋は真っ直ぐ私を見ていて茶化したはずなのにいきなりの窮地


「やだ、モテ期?」


上手く躱せなくて声がうわずったのは仕方ない


「小雪は、俺達のこと嫌いか?」


きたよ、直球


「その好きと嫌いはミカンと同じレベルかしら
それなら嫌いじゃないわよ?
そうね・・・ホワイトチョコぐらい」


「んん?ホワイトチョコって例えが難しいじゃねぇのよ」


「あら、簡単よ?あれば摘むけど無ければ買ってまでは食べない程度」


「クゥーッ、子猫ちゃんは氷だな」


「嗜好品と同じ、だから人としては好きにはならない
好きな人に抱かれる・・・なんて一生ないわ」














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