鬼の棲む街
「俺の好きは“抱ける”の好き」
「「は?」」
尋の告白に巧と二人で固まった
「女として小雪が好きだ」
「・・・な、に、言って」
「マンションに連れ込んだのだって可愛くて仕方なくて攫うしかなかった」
「・・・」危機一髪だった
「尋、ズルーい。俺だって子猫ちゃんのこと
女の子としても子猫ちゃんとしてもデロ甘に溶かせる程好きだぜ?」
・・・再びの、カオス
可愛くて仕方なくて攫う?デロ甘に溶かすってなに?
「これって口説かれてんの?私」
「「あぁ」」
「へぇ」
「んだ?その反応は」
尋の眉間に皺がよる
「ごめんね、どちらも無理よ?彼氏は作らないの、今までもこれからも」
「どういうことだ」
眉間の皺が更に深くなる
「ん?そのままの意味よ!誰とも付き合わないってこと」
「あの男は?」
「あの男?」
「土曜日に杉田の店で小雪を攫った男」
「あ〜、あれは彼氏じゃないわ」
「親密そうだったろ」
「見てたの?」
「偶々な」
「付き合ってないけど、そういう関係」
「あ゛?」
「気持ちが入らないから後腐れなし
いるでしょ?二人にも、そういう関係の人」
「「・・・」」
交互に見れば押し黙った
「フフ、わかりやすい」
「男と女は違うだろうが」
「何が違うの?」
「ん、と、その、ん」
「違いも答えられない程度のことよ?都合の良い関係、ただそれだけ」
「大事にしろよ。自分を」
そこまで言うと尋は眉を下げた
ほらね?人と関わるとこうなるから嫌
「・・・しないわ」
言い切った私を正面から悲痛な表情で見つめる巧
「子猫ちゃん」
「大事になんてしないわよ?私の身体は私の思い通りになんてならないの
だから傷付けることで初めて自分のって実感できる。それのどこが悪いの?」
この言葉は本当は父様に言いたいんだと思う
それなのに関係ない双子にぶちまけて傷付けるなんて・・・最低だ