十六夜月と美しい青色
「ねえ結花、そろそろ凌駕さんたち来られるから早く支度なさい。」
「分かってる〜!」
今日はクリーム色のシンプルなワンピースに、凌駕からの誕生日プレゼントに貰った、真珠のブローチを胸元につけた。
客間に続く廊下から見える庭の木々も、少しずつ色づき始め、日を追うごとに秋らしくなってきた。
来春、結花は凌駕と結婚式を上げる。結納も終わり、お式や新居のことなど、今日はその打ち合わせも兼ねて、凌駕と両親が結花の家を訪ねて来ることになっていた。
昨夜も母と、先日下見で行った結婚式場で貰ったパンフレットを見ながら、白無垢か色打掛にするか、ドレスはどうしようかと、話が盛り上がっていた。
凌駕の実家は和菓子屋で、地元でも名が通った老舗だ。やはり、和式でお式をするのが良いのかと考えていた。そして凌駕は、和菓子屋の跡を取るために、職人に混じって修行中の身だ。
よくあるイケメン、ハイスペックの物語のヒーローではないけれど、なりふり構わず結花を甘やかして、そして愛してると言って大切にしてくれる彼を、結花はなんの疑いもなく信じていた。
玄関の呼び鈴が鳴ると、結花は凌駕達を迎え入れ、客間に招き入れると、結花の父に向かい合うように、凌駕達も腰を下ろした。
「藤沢のおじさん、おばさん、そして結花、今日はとても大事な話しがあってお邪魔させていただきました。」
そう話し始めた凌駕は、結花の両親の方ばかり見て、結花とは目も合わせようとしない。横に座っている大宮のご両親も、顔を引つらせ蒼白な様子に、どことなくおかしな雰囲気が漂い始めた。
「どうされましたかな。どうぞ、足を崩して楽になさってください。お店の方もお忙しいときにお越し頂いて、申し訳なかったね。」
父が緊張を解くように、凌駕たちに声をかけ、母に早くコーヒーを出すよう催促した。
「お待たせ。ねえ、佳代さん、お式は神前式が良いと思わない〜?。昨夜も結花と式場のパンフレット見てたら、お式は和装で披露宴でドレスかなぁとか、盛り上がっちゃって!」
母は、楽しそうに凌駕さんのお母さんの佳代さんに話しかけながら、手早くコーヒーと茶菓子を出すと、父の隣に座った。
「そっ…そうね…。」
消え入るような声で、微かにだけど、佳代は返事をした。結花が知っているいつもの、はつらつとした佳代とは様子が違った。
結花の母と凌駕の母の佳代とは、古くからの友人で、親友でもある。結花や凌駕が子どもの頃は、家族ぐるみでのお付き合いもしていた。
でも、凌駕が東京の大学に進学するため実家を離れたあと、入れ替わるように結花が大学進学のために実家を離れたから、それまでの様な付き合いは無くなったにしろ、親同士は、相変わらず良いお付き合いをしていたのだ。
結花が大学を卒業後実家に戻った時には、6歳離れている兄の柊吾が大学を卒業した後、茶舗の仕事をするようになって個人商店から法人化し、今までの店舗だけではなく茶舗のノウハウを生かして企業向けのベンダーサービス部門を立ち上げ、会社としての生き残りを図っていた。結花も社員として家業を支えてきた。
そんな中、同期が主催した飲み会で凌駕と偶然にも再開して、付き合うようになった事も、誰よりも喜んでくれていたのは、この二人だった。
だから、激しい情熱に駆られてのプロポーズではなかったけれど、時間をかけてゆっくりお互いを理解しあってきたことで、彼からのプロポーズをなんの戸惑いもなく受け入れたし、自然な成り行きだと受け止めていた。
「分かってる〜!」
今日はクリーム色のシンプルなワンピースに、凌駕からの誕生日プレゼントに貰った、真珠のブローチを胸元につけた。
客間に続く廊下から見える庭の木々も、少しずつ色づき始め、日を追うごとに秋らしくなってきた。
来春、結花は凌駕と結婚式を上げる。結納も終わり、お式や新居のことなど、今日はその打ち合わせも兼ねて、凌駕と両親が結花の家を訪ねて来ることになっていた。
昨夜も母と、先日下見で行った結婚式場で貰ったパンフレットを見ながら、白無垢か色打掛にするか、ドレスはどうしようかと、話が盛り上がっていた。
凌駕の実家は和菓子屋で、地元でも名が通った老舗だ。やはり、和式でお式をするのが良いのかと考えていた。そして凌駕は、和菓子屋の跡を取るために、職人に混じって修行中の身だ。
よくあるイケメン、ハイスペックの物語のヒーローではないけれど、なりふり構わず結花を甘やかして、そして愛してると言って大切にしてくれる彼を、結花はなんの疑いもなく信じていた。
玄関の呼び鈴が鳴ると、結花は凌駕達を迎え入れ、客間に招き入れると、結花の父に向かい合うように、凌駕達も腰を下ろした。
「藤沢のおじさん、おばさん、そして結花、今日はとても大事な話しがあってお邪魔させていただきました。」
そう話し始めた凌駕は、結花の両親の方ばかり見て、結花とは目も合わせようとしない。横に座っている大宮のご両親も、顔を引つらせ蒼白な様子に、どことなくおかしな雰囲気が漂い始めた。
「どうされましたかな。どうぞ、足を崩して楽になさってください。お店の方もお忙しいときにお越し頂いて、申し訳なかったね。」
父が緊張を解くように、凌駕たちに声をかけ、母に早くコーヒーを出すよう催促した。
「お待たせ。ねえ、佳代さん、お式は神前式が良いと思わない〜?。昨夜も結花と式場のパンフレット見てたら、お式は和装で披露宴でドレスかなぁとか、盛り上がっちゃって!」
母は、楽しそうに凌駕さんのお母さんの佳代さんに話しかけながら、手早くコーヒーと茶菓子を出すと、父の隣に座った。
「そっ…そうね…。」
消え入るような声で、微かにだけど、佳代は返事をした。結花が知っているいつもの、はつらつとした佳代とは様子が違った。
結花の母と凌駕の母の佳代とは、古くからの友人で、親友でもある。結花や凌駕が子どもの頃は、家族ぐるみでのお付き合いもしていた。
でも、凌駕が東京の大学に進学するため実家を離れたあと、入れ替わるように結花が大学進学のために実家を離れたから、それまでの様な付き合いは無くなったにしろ、親同士は、相変わらず良いお付き合いをしていたのだ。
結花が大学を卒業後実家に戻った時には、6歳離れている兄の柊吾が大学を卒業した後、茶舗の仕事をするようになって個人商店から法人化し、今までの店舗だけではなく茶舗のノウハウを生かして企業向けのベンダーサービス部門を立ち上げ、会社としての生き残りを図っていた。結花も社員として家業を支えてきた。
そんな中、同期が主催した飲み会で凌駕と偶然にも再開して、付き合うようになった事も、誰よりも喜んでくれていたのは、この二人だった。
だから、激しい情熱に駆られてのプロポーズではなかったけれど、時間をかけてゆっくりお互いを理解しあってきたことで、彼からのプロポーズをなんの戸惑いもなく受け入れたし、自然な成り行きだと受け止めていた。