十六夜月と美しい青色
「わかっていますよ」
改めて聞くその声に、結花は胸が締め付けられるような気持になった。心臓が早鐘を叩くように鼓動をうちはじめると、再びほのかに頬が赤みを増していった。
「この席を設けるために、結花さんと紅梅屋の息子さんとのことを多少だが和人からは聞いたよ。我が家としては、結花さんには非がないのだからそのことについては何も問題はないと考えている。だから、和人の事をよく見て考えて欲しい。お互いの親の仕事のつながりなど考えずに、きちんと息子に向き合って答えを出せばいい。結花さんがどんな答えを出そうが、それについては和人の努力次第だよ。気負わなくていいからね」
「そうよ、こんな素敵なお嬢さんがお嫁に来てくだされば言うことはないけれど、それも和人次第なのだから貴方も頑張りなさい。後は、二人に任せて私たちは失礼させていただくのはどうかしら?」
和人の母が、結花の両親の方を見て声をかけた。
「二人とも、折角の機会だから素直になってしっかりと話をしなさい。和人君の気持ちも、今までのことを見る限り偽りではないと私は思うよ」
父の言葉に結花は頷きながら、和人の自分を見るその視線の奥に、あの日の『俺が、これ以上ない程愛してお前を幸せにしてやる』と言った言葉を思い出していた。
「まあ、娘が結婚の許しもしていない男の胸に抱かれるのを、黙って見るのは今回だけだぞ」
「結婚の承諾を、結花さんから頂けるようにするだけですから」
結花の父が釘を刺す様に言うのを、和人が苦笑いで答えていた。
「そうですな。あとは若い者たちだけで、まあ愚息には頑張ってもらうとするか」
和人の父がそう答えると、両家の親たちは示し合わせたように席を立ち、和やかに歓談しながら部屋を後にしていった。
「優しそうな、ご両親ね」
「ああ、いつもはそんな事ないんだけどな。仕事が絡むととても厳しい人だから」
「さっきの様子を見てたから、なんだか想像つくわ」
やっと、緊張がほぐれたように結花から笑い声がこぼれ出た。
「本当に…会いたかった」
「なによ…、電話もくれなかったのに。トークアプリで時々やり取りするだけで、そんな風に思ってるなんて、思いもしなかった」
「お前が断れない方法で、会うきっかけが欲しかったんだ。それなのに、見合い話すら結花の耳に入る前に断られて、柊吾からはしばらくそっとしておいて欲しいと言われる。八方ふさがりになった気分だったし、ご両親にお願いに伺ってもよい返事がなかなかもらえなくて流石にへこんでさ、もう諦めようと思った。そんな時に、藤沢社長から会うだけならと返事を貰えて、嬉しくてしょうがなかったよ」
照れ笑いを隠すように、片手で口元を覆っていた。
「だから、来てくれてありがとう。今日だけは、俺の好きなように結花を甘やかさせて欲しい。それで少しでも、一緒に居てもいいかなって思ってもらえたら、また会う約束をしよう。ちゃんと俺と恋をして、そして俺を選んで。そうでなければ、俺も諦めるから縁談を断ってくれてもいいよ」
改めて聞くその声に、結花は胸が締め付けられるような気持になった。心臓が早鐘を叩くように鼓動をうちはじめると、再びほのかに頬が赤みを増していった。
「この席を設けるために、結花さんと紅梅屋の息子さんとのことを多少だが和人からは聞いたよ。我が家としては、結花さんには非がないのだからそのことについては何も問題はないと考えている。だから、和人の事をよく見て考えて欲しい。お互いの親の仕事のつながりなど考えずに、きちんと息子に向き合って答えを出せばいい。結花さんがどんな答えを出そうが、それについては和人の努力次第だよ。気負わなくていいからね」
「そうよ、こんな素敵なお嬢さんがお嫁に来てくだされば言うことはないけれど、それも和人次第なのだから貴方も頑張りなさい。後は、二人に任せて私たちは失礼させていただくのはどうかしら?」
和人の母が、結花の両親の方を見て声をかけた。
「二人とも、折角の機会だから素直になってしっかりと話をしなさい。和人君の気持ちも、今までのことを見る限り偽りではないと私は思うよ」
父の言葉に結花は頷きながら、和人の自分を見るその視線の奥に、あの日の『俺が、これ以上ない程愛してお前を幸せにしてやる』と言った言葉を思い出していた。
「まあ、娘が結婚の許しもしていない男の胸に抱かれるのを、黙って見るのは今回だけだぞ」
「結婚の承諾を、結花さんから頂けるようにするだけですから」
結花の父が釘を刺す様に言うのを、和人が苦笑いで答えていた。
「そうですな。あとは若い者たちだけで、まあ愚息には頑張ってもらうとするか」
和人の父がそう答えると、両家の親たちは示し合わせたように席を立ち、和やかに歓談しながら部屋を後にしていった。
「優しそうな、ご両親ね」
「ああ、いつもはそんな事ないんだけどな。仕事が絡むととても厳しい人だから」
「さっきの様子を見てたから、なんだか想像つくわ」
やっと、緊張がほぐれたように結花から笑い声がこぼれ出た。
「本当に…会いたかった」
「なによ…、電話もくれなかったのに。トークアプリで時々やり取りするだけで、そんな風に思ってるなんて、思いもしなかった」
「お前が断れない方法で、会うきっかけが欲しかったんだ。それなのに、見合い話すら結花の耳に入る前に断られて、柊吾からはしばらくそっとしておいて欲しいと言われる。八方ふさがりになった気分だったし、ご両親にお願いに伺ってもよい返事がなかなかもらえなくて流石にへこんでさ、もう諦めようと思った。そんな時に、藤沢社長から会うだけならと返事を貰えて、嬉しくてしょうがなかったよ」
照れ笑いを隠すように、片手で口元を覆っていた。
「だから、来てくれてありがとう。今日だけは、俺の好きなように結花を甘やかさせて欲しい。それで少しでも、一緒に居てもいいかなって思ってもらえたら、また会う約束をしよう。ちゃんと俺と恋をして、そして俺を選んで。そうでなければ、俺も諦めるから縁談を断ってくれてもいいよ」