十六夜月と美しい青色
「半分は、俺の仕事のことで相談。あとの半分は、あのクリスマスの仕切り直しをしたくて。それに、明日の日曜日は俺も休みだからゆっくりできるしね」
結花もコーヒーを淹れて、食事を始めた。和人の、少し不自然な微笑みに引っかかるものを感じた。
「もしかして、あのクリスマスの夜に、私の気持ちがぐちゃぐちゃだって言ったことをまだ気にしているの?」
朝から、ボディブロウのような一言を放った。和人の様子にぐずぐずと思い悩んでも、悪い方に思考がいってしまっても、決して前向きなことにはならないのは分かってる。和人とちゃんと向き合って一緒に居たいと思う気持ちが、結花の背中を押した。
思わぬ結花の一言に、和人のサンドイッチを持つ手がビクッと震えて一瞬動きが止まったのを、結花は見逃さなかった。
「気にしてないと言ったら嘘になる。だけど結花はここに居てくれるし、あの夜、俺の隣が結花の居場所だと感じれるようにするって言っただろう。時間はかかるかもしれないけれど、その気持ちは嘘じゃないし、今こうして当たり前のように一緒にいてくれることに幸せを感じているのは俺だけじゃないだろう?結花もそうだと自惚れているんだが」
更に、和人はさっきの一瞬の戸惑いを隠すかのように、真っ直ぐに結花を射抜くような眼で見ながら食事を進めていた。それでも結花は、その瞳の奥に何かが隠れているように思えた。
「でも仕事の事なら、家でのほうが落ち着いて話ができるんじゃないの?無理に、ホテルに泊まらなくたって…」
「それに、休日出勤もあったから、結花と休みが重なっても一緒に過ごせなかっただろう?大事な話があるし、いつもと違う雰囲気もいいだろ。今夜は俺がそうしたいと思っているんだ、少し我儘に付き合ってくれないか。それに、そんなに難しく考えなくても、ホワイトデーも近いしそのプレゼントだとでも思えばいい。それより今日は、またどこかのベーカリーに行くのか?」
「今日は真琴と久しぶりにランチの約束をしてるの。メッセージのやり取りはしてたんだけど、向こうも久しぶりに会いたいっていうから、ショッピングがてらランチでもどうかって話になって」
「そうか、楽しんでおいでよ」
「ありがとう」
「ごちそうさま。あと今夜は19時に、駅前のロータリーで待ってるから」
コーヒーを飲み干した後のカップをテーブルに置くと、そそくさと席を立った。
「わかったわ」
和人の後ろ姿に返事をしながら、結花はため息をついた。我儘に付き合ってなんて言われてしまうと、これ以上なにも言いようがない。
本当は、凌駕の事が忘れられないんだろうと言われる方がどれ程いいか。
豪華な食事やホテルより、もっと二人で過ごしたい。朝、目が覚めてすぐ和人の胸板に頬が触れてるときに感じる、彼の体温、鼓動、寝息。どれも、私だけのものだと思っていること、和人は気づいてくれているのだろうか…。
結花もコーヒーを淹れて、食事を始めた。和人の、少し不自然な微笑みに引っかかるものを感じた。
「もしかして、あのクリスマスの夜に、私の気持ちがぐちゃぐちゃだって言ったことをまだ気にしているの?」
朝から、ボディブロウのような一言を放った。和人の様子にぐずぐずと思い悩んでも、悪い方に思考がいってしまっても、決して前向きなことにはならないのは分かってる。和人とちゃんと向き合って一緒に居たいと思う気持ちが、結花の背中を押した。
思わぬ結花の一言に、和人のサンドイッチを持つ手がビクッと震えて一瞬動きが止まったのを、結花は見逃さなかった。
「気にしてないと言ったら嘘になる。だけど結花はここに居てくれるし、あの夜、俺の隣が結花の居場所だと感じれるようにするって言っただろう。時間はかかるかもしれないけれど、その気持ちは嘘じゃないし、今こうして当たり前のように一緒にいてくれることに幸せを感じているのは俺だけじゃないだろう?結花もそうだと自惚れているんだが」
更に、和人はさっきの一瞬の戸惑いを隠すかのように、真っ直ぐに結花を射抜くような眼で見ながら食事を進めていた。それでも結花は、その瞳の奥に何かが隠れているように思えた。
「でも仕事の事なら、家でのほうが落ち着いて話ができるんじゃないの?無理に、ホテルに泊まらなくたって…」
「それに、休日出勤もあったから、結花と休みが重なっても一緒に過ごせなかっただろう?大事な話があるし、いつもと違う雰囲気もいいだろ。今夜は俺がそうしたいと思っているんだ、少し我儘に付き合ってくれないか。それに、そんなに難しく考えなくても、ホワイトデーも近いしそのプレゼントだとでも思えばいい。それより今日は、またどこかのベーカリーに行くのか?」
「今日は真琴と久しぶりにランチの約束をしてるの。メッセージのやり取りはしてたんだけど、向こうも久しぶりに会いたいっていうから、ショッピングがてらランチでもどうかって話になって」
「そうか、楽しんでおいでよ」
「ありがとう」
「ごちそうさま。あと今夜は19時に、駅前のロータリーで待ってるから」
コーヒーを飲み干した後のカップをテーブルに置くと、そそくさと席を立った。
「わかったわ」
和人の後ろ姿に返事をしながら、結花はため息をついた。我儘に付き合ってなんて言われてしまうと、これ以上なにも言いようがない。
本当は、凌駕の事が忘れられないんだろうと言われる方がどれ程いいか。
豪華な食事やホテルより、もっと二人で過ごしたい。朝、目が覚めてすぐ和人の胸板に頬が触れてるときに感じる、彼の体温、鼓動、寝息。どれも、私だけのものだと思っていること、和人は気づいてくれているのだろうか…。