コインの約束
◎ モテ期到来の湊
修学旅行から一か月が過ぎ、いつもの日常に戻った俺たち。
変わったことと言えば、俺は最近、結城のクラスの女子からよく声を掛けられるようになったこと。
結城に言わせると、新幹線で高柳って性格ブスの女に皆が思っていても言えなかったことを俺がいとも簡単にぶちまけたことが女子ウケしたんじゃないかって。
いやいや、そんなことで?
嬉しいぞ、俺。
でもその人気と引き換えに、最近凛が冷たいんだ。
妬いてくれてるんなら嬉しいけど。どうもそうじゃないらしいから手に負えない。
凛に言わせたら、こんな俺の人気なんてどうってことないって。
修学旅行から帰ってきてから、俺は芽衣のことばかり気にしているって。
俺の心の一番奥にはまだ芽衣がいるんだって、凛に言われて。
それが凛は気に入らないらしい。
なんだそれ?って思ったよ。
凛にはいつも、芽衣は本気で親友なんだって話した。何度も話した。
それを理解してくれないんだ。
ある時、凛に聞かれたことがあった。
もし、目の前で私と芽衣先輩が溺れていて、どちらか一人しか助けられないとしたら湊先輩はどっちを助けるの?
そんな昔からあるような質問をしてきた。
俺は真剣に悩んだ。
バスケができる元気な凛と体のあまり丈夫じゃない芽衣。
俺は、芽衣を助けてからすぐに凛を助けるって。
俺なら二人を助けられるって。
それが凛の仕掛けた地雷だった。
どうも俺は答えを間違えたようだ。
おれは凛も芽衣もどっちも大好きなんだよ。
それでも、凛。
結城が芽衣より先に死んだら、俺は芽衣の所へ行くからな。
俺は芽衣の一番の大親友なんだ。永遠にな。