いけません、凪様
 伊織様はとても端正な顔立ちをしていて、ただ座っているだけだというのに気品が溢れていた。
 そして伊織様はあの時と変わらず、私に優しく接してくれ、私も両親のように、この方に仕えたいと思った。

 無理を承知で頼むと、伊織様は困ったようにしていた。けど何度か頼むと、伊織様のご子息である私の一つ上の凪様の話し相手になってほしいと言われた。
 話し相手?と不思議には思ったけど、伊織様から頼まれたことが嬉しくて、私はそれを快諾した。

 凪様は初めて会った時から、私に優しくしてくれた。
 最初は伊織様に頼まれたことだからと思って凪様と一緒にいたけど、段々凪様の人柄に惹かれて、ちゃんとこの方に仕えたいと思った。

 そして、凪様の話し相手をしながら、他にも何か役に立てないかと、他の使用人たちに仕事を教えてもらい、気づけば凪様のお世話係になっていた。

 それまでは通っていたけど、お世話係なら住み込みの方が楽だろうと思って、住まわせてもらうことになった。

 過去の話はこれくらいにしておいて、もうそろそろ今の話をしよう。
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