丸重城の人々～後編～

響子｢私……最低…｣
大翔と柚希に嫉妬する自分が嫌で堪らない。

そこへ将大が帰ってきた。
将大｢響子、おかえり。
仕事、お疲れ様｣
響子｢………｣
そう言って、腕の中に閉じ込めるように抱き締めた。

将大は自分が響子より遅くなっても、必ず“おかえり。仕事、お疲れ様”と労いの言葉をかけるのだ。

この低く柔らかい声、語りかけるような優しい労いの言葉。抱き締められた時の将大の匂い。
全ていつもと変わらないのに、あの光景が頭をよぎる。
響子｢離して…｣
将大｢ん？どうした？｣
将大の腕の中から逃れた響子の顔を将大が覗き込む。

響子｢シャワー浴びてくる｣
その優しい眼差しを見てられなくて、逃げるように言ってドアに向かった。
将大｢じゃあ、俺も！一緒に入る｣
響子｢一人がいい｣
将大｢は？ダメだ！｣
響子｢は？｣
将大｢響子の様子がおかしい。一人になんてしない｣
響子｢………｣
二人で下に下りる途中、また二階の大翔夫婦の部屋から大翔の声が聞こえた。

大翔｢柚～起きて～
起きないと、キスするよ？｣
柚希｢………｣
大翔｢柚～｣
柚希｢………｣
大翔｢柚希～｣
柚希｢………｣
大翔｢柚ちゃーん｣

しばらく見つめ、音を立てないようにドアを閉めた将大。
将大｢大翔は本当……柚希ちゃんを愛してんだな(笑)｣
響子｢そうね。羨ましいね…｣
将大｢は？｣
響子｢え？｣
将大｢………｣
響子｢な、何？｣
将大｢俺も響子を愛してるよ｣
響子｢え？｣

将大｢もう…響子を放さねぇから……！｣