丸重城の人々~後編~
音弥「え……英里ちゃん!!?」
慌てて駆け寄り、頭を撫でる。

英里「ごめん。座ろ?」

音弥「うん!
あ!今日は、僕が奢るからね!」

英里「え?お金、あるの?」

音弥「フフ…コンビニで働いてるって言ったでしょ!
正直…ご飯奢るまではないけど、コーヒー奢るくらいはできる!」

英里「今、どうしてるの?
あのマンション、住み続けられないでしょ?」

音弥「うん。あそこは解約した。
僕じゃ、とてもじゃないけど払えないし。
今は、アパートで暮らしてる。
風呂無しでトイレも共同だけど、家賃が安いから!」

英里「そう」

音弥「英里ちゃん」

英里「ん?」

音弥「また……
……………ううん。連絡、ありがとう!
会ってくれて、嬉しかった」

英里「うん」



英里「━━━━━ご馳走様。ありがとう」

音弥「ううん!」

英里「………」

音弥「英里ちゃん…?」


英里は、戸惑っていた。

ヤバい。
離れたくない。と━━━━━

思わず、音弥の服を握りしめていた。


音弥「……………もう少し、話そう!」
英里の手を握り、引いて歩きだした音弥。

英里も引かれるまま、歩きだした。

音弥「英里ちゃんは、仕事順調?」

英里「うん」

音弥「社長だもんね!
相変わらず、カッコいい!」

英里「楽しいよ。
今、暮らしてる屋敷には沢山の人がいて、みんな良くしてくれるの。
私のこと、家族みたいに思ってくれてる!
今回、音弥に会うことも家族が背中を押してくれたの。
“私が音弥を信じるなら、私も信じる”って」

音弥「そっか」
ピタリと立ち止まり、振り返った音弥。

そのまま英里を見据えて言った。

音弥「英里ちゃん。
本当にごめんね!!
今まで、散々傷つけて!
英里ちゃんが出ていって、僕…初めてわかったんだ。
最低なことしたって!
ほんとに最低なんだけど、英里ちゃんは僕の面倒を見ることに幸せを感じてるって思ってた。
だから仕事する必要ないって思い込んでたし、浮気も遊びだし大丈夫って。
でも、違ったんだよね。
僕のことを、本当に好きでいてくれたから尽くしてくれてたんだって!」

英里「うん。
大好きだったよ。本当に、心から!」

音弥「だから今度は、僕が英里ちゃんに尽くせるようになりたいって思ったんだ。
英里ちゃんの為に、仕事とか頑張ろうって!」

英里「そっか!」

音弥「だから……だからね……」

英里「うん」


音弥「もう一度、チャンスをもらえないかな?
今度こそ、英里ちゃんを幸せにするから!」
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