丸重城の人々~後編~
大翔「柚がさ……」
中也「え?柚希?」
大翔「泣くんだ。お前を傷つけてるって……」
中也「え……」

大翔「俺はどうしたらいいかわかんねぇ。
俺はお前に…いや、誰にも柚を渡す気はない。
だからってここを出て二人で暮らすにしても、日中が心配だから今更ここを出て行けない。
ここにいる連中やお前がいてくれるから、俺は安心して仕事ができてる。
でもお前が辛いなら、ここを出ていくことも考えないといけねぇなと思ってる」

中也「俺は……」
大翔「…………最近、柚がお前に対して気をつかいだしてる。変なこと言ってまた傷つけてるんじゃないかって!自分の存在が、お前を傷つけてるって」

中也「俺だって、わかんねぇんだよ!?
でも…離れたくない!柚希の傍にいたい!
一生手に入らないってわかってるけど、できる限り傍にいて守りたい!兄貴の次で構わないから、俺を頼ってほしい!」

大翔「じゃあ…もう一回だけ聞く。
俺と柚は、ここにいていいんだな?
もしここにいていいなら、もう少し柚が気をつかわなくて済むようにしてほしい。
俺はもう…あんな涙は見たくない!」
中也「いてくれよ!唯一、一緒にいられる空間なんだから!柚希に気をつかわせないように振る舞うから!
それにもし出ていったら、俺は居候させてもらうから!」

大翔「わかった。もう聞かないからな!」

そこへ柚希がノックをしてきた。
コンコン━━━━
柚希「大翔、いる?」
大翔「んー?いるよ」
中也「柚希いいよ、入って!」

柚希「ごめんね、お話し中に」
大翔「どうした?」
柚希「お買い物行きたくて……急ぎじゃないんだけど、大翔がいる時に済ませてた方がいいかなって!」

大翔「ん。いいよ!
じゃあな、中也。
ちょっと、買い物行ってくる!」

中也「待って!柚希!」
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