丸重城の人々~後編~
英里「そうだったんですね」
広子「過去に色んなことがあってね……
だから、悪く思わないでね。柚希ちゃん、必死なの。
早く病気を克服して、みんなの負担を減らしたいって言って」

英里「はい。大丈夫ですよ!私もできることは協力します!」
広子「…………初めて」
英里「え?」
広子「そんなこと言ってくれる人。
今までの人達は、柚希ちゃんのこと“協力する”なんて言ってくれたことなかったわ。
何かしら目的を持ってここに越してきた人ばかりだったから」
英里「そうなんですね…」

柚希「広子さん、お風呂とトイレのお掃除終わったから、お部屋の掃除しますね!」
英里「あ、お手伝いします!」
柚希「え?そんな…英里さんはお休みの日なんですから……ゆっくりされてください。
あ、そうだ。コーヒー入れましょうか?」
目は合わせられないが、なんとか言葉を繋ぐ柚希。

英里「じゃあ…お言葉に甘えて…部屋の片付けしますね!」
英里がリビングを出ていく。

広子「柚希ちゃん、無理しなくていいのよ。
ちゃんと英里さんに病気のこと話したから」
柚希「でも早く、克服したくて……」
広子「どうしたの?なんか、焦ってない?」
柚希「え?いえ…そんな……」
広子「柚希ちゃん?」

柚希「子ども…」
広子「え?柚希ちゃん、まさか!」
柚希「あ、違うんです!私、お薬飲んでるからそれはないんですけど、年齢的にも考えなきゃなって!
でもこの状態では子どもなんて考えられないので、早く克服したいなって!」
広子「そう」
柚希「大翔だって…何も言わないけど、ほんとは……」

広子「それはないわね!」
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