丸重城の人々~後編~
その頃の柚希。

柚希「ねぇ…一人にして?
一人になりたい」
響子「嫌よ!」
柚希「どうして?」
響子「死ぬ気でしょ?
死なせないわよ!」

柚希「響ちゃん…」
響子「バレバレ!柚希の考えてることなんて!」
広子「そうね」
柚希「もう嫌なの。身体の震えは日に日に酷くなるし、なかなか人に慣れないし……何よりみんなに迷惑かけてる。英里さんだって、こんな私嫌ですよね?」
英里「いえ。私は柚希さんともっと仲良くなりたいと思ってます」
柚希「え?」
英里「私、最初…正直退いたんです。
柚希さんがこの家の中心って聞いて。
でも、この短期間一緒にいてその意味がわかりました。柚希さんがなぜここまで大切にされるのか。
過去に色々あったことに加えて、皆さんへの健気な気遣いと労い。
私にも震えながら、気遣ってくれて……
仕事から帰って、柚希さんの“おかえりなさい。お仕事お疲れ様です”の言葉と笑顔にどれだけ癒されてるか……
そればかりか遅くまで皆さんの体調などを気遣って、この前なんか、夜中わざわざ起きてコーヒー入れてくれたじゃないですか?
だから私はもっともっと、仲良くなりたいです!
私も柚希さんの病気克服のお手伝いしたいです!」

柚希「英里さん……」
響子「柚希がそんなに死にたいなら、みんなの前で死になさいよ!
もうすぐ将大達が帰ってくるから、みんなの前で…
一人でなんて卑怯なことしないで、みんなの前で堂々と殺りなさいよ!
柚希にそれができるなら!
また私達に、地獄を味合わせたいなら!」

響子が泣いている。
あまり涙を見せない、響子が。
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