こうして魔王は娶られましたとさ。
初めてましての代わりに「嫁になれ」

 この世に双子の魔王として生を受けて、だいたい、二千年くらい。
 およそ千八百年前に、先代の魔王である父とその妻である母は「夫婦水入らずでのんびりするからあとはお前達に任せる」とバカでかい笑い声と共に城を出た。
 そしてその翌日、双子の弟は「姉さん、俺、薬草マスターになる!」と魔王が(にな)うべき全てを放棄して薬草マスターを目指す旅に出た。
 お前ら、滅んでしまえ。
 いの一番にそれを思ったけれど、たったひとり残されてしまった僕は、とりあえず両親や弟が気まぐれに帰ってきたときのために、人間達が魔王城と呼ぶ実家と、その周りにある花畑を行き来する日々を送っていた。
 魔王、と聞けば、世界征服だとか物騒な単語を想像する者も珍しくはないだろう。しかし、両親もそうだったが、弟もそうだし、僕自身も【世界を牛耳(ぎゅうじ)る】なんてことに興味はない。何代も先の先の先のご先祖さまあたりは牛耳(ぎゅうじ)りたかったのかもしれないけれど、そういうの、正直言って非常にめんどうだから、僕はしない。
 何事も、平和が一番だ。
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