世にも歪な恋物語
それからというもの、休み時間、美しい転校生見たさに教室までやってくる女子は10人や20人どころじゃなかった。
「写真撮ってもらいたいなあ」
「声かけてみようよ」
「ムリムリ!」
「目の保養~」
連日、大盛況。
動物園のパンダにも劣らない人気っぷりだな。
「お前だけじゃね。転校生のこと意識してねえのは」
「そうかもね」
手元のスマホをイジったまま、タクミに返事する。
校内でのスマホの使用は原則禁止であるが、先生に見つからなきゃ問題ない。
「まあ。シホには、俺がいるからな」
「黙れヤンキー」
「照れんなって」
「無害だとは思うよ」
「ンだよそれ」
あたしはタクミを男としてみていない。
去年ぐんと背が伸びて、声変わりまでしてしまったものの、タクミはタクミっていうか。
家が近くてよく顔を合わせる同級生。
それ以上でも、それ以下でもない。