世にも歪な恋物語



 それからというもの、休み時間、美しい転校生見たさに教室までやってくる女子は10人や20人どころじゃなかった。


「写真撮ってもらいたいなあ」

「声かけてみようよ」

「ムリムリ!」

「目の保養~」


 連日、大盛況。

 動物園のパンダにも劣らない人気っぷりだな。


「お前だけじゃね。転校生のこと意識してねえのは」

「そうかもね」


 手元のスマホをイジったまま、タクミに返事する。

 校内でのスマホの使用は原則禁止であるが、先生に見つからなきゃ問題ない。


「まあ。シホには、俺がいるからな」

「黙れヤンキー」

「照れんなって」

「無害だとは思うよ」

「ンだよそれ」


 あたしはタクミを男としてみていない。


 去年ぐんと背が伸びて、声変わりまでしてしまったものの、タクミはタクミっていうか。


 家が近くてよく顔を合わせる同級生。


 それ以上でも、それ以下でもない。


< 29 / 107 >

この作品をシェア

pagetop