世にも歪な恋物語
「あは。センパイ、困ってる」
大きな口を開けて笑う後輩A。
八重歯、かわいいな。
からかわれてるの、だろう。
それでも悪い気がしない。
こうやって、この子は、自分のファンを増やしてくんだろう。
ひとは、無邪気なこの子のトリコになってくんだろう。
「その髪。いつから伸ばしてるんですか」
いつだっけ。
最後に切ったのがいつか覚えてないくらいには、放置してる。
「伸ばしてるんじゃなくて。切るのが面倒なだけ」
「それだけ長いと手入れ大変ですよね。そっちのが、めんどくないですか」
「そうでもないよ」
「センパイの好きな食べ物って。なんですか」
「特にない」
「ひとつも?」
「思いつかない」
「それじゃあ。帰ってテーブルの上に、ホールのケーキかステーキがあるなら。どっちが嬉しいですか」
「……もう少し重くないのがいい」
「食が細いんですね」