世にも歪な恋物語


「どこ行くんですか。センパイ」


 …………え?


「帰るんだよ」

「センパイの家。そこじゃないでしょ」


 後輩Aが細く長い指でさしたのは、マンションと反対側だった。


「あっち」


 ドクン、と大きく胸が鼓動する。


(こと)センパイの家は、築25年の3階建てアパートの。2階、角部屋です」

「……なん、で」

「どうしてオレに家や名前を知られてるか、不思議ですか」


 不思議を通り越して――、怖い。


「オレ。気になることは、なんでも知りたくなる性質(たち)なんです」

< 52 / 107 >

この作品をシェア

pagetop