世にも歪な恋物語
「どこ行くんですか。センパイ」
…………え?
「帰るんだよ」
「センパイの家。そこじゃないでしょ」
後輩Aが細く長い指でさしたのは、マンションと反対側だった。
「あっち」
ドクン、と大きく胸が鼓動する。
「琴センパイの家は、築25年の3階建てアパートの。2階、角部屋です」
「……なん、で」
「どうしてオレに家や名前を知られてるか、不思議ですか」
不思議を通り越して――、怖い。
「オレ。気になることは、なんでも知りたくなる性質なんです」