世にも歪な恋物語
「おかえり。ずいぶんと遅かったね」
――――オレは、無敵。
「どこ行ってたの? 雨、降ってきたろ。ああ、傘も持たずに……。こんなに濡れて」
幸い。今は、まだ。
「黙りこんでちゃ。わからないよ」
なにをしても、赦される。
なにを……しても。
「学校でイヤなことでもあった? 僕に、話してごらん」
――――12才だから
「……お母さんは?」
「彼女なら寝室にいるけど。もう、寝たよ」
あの女は、自分の娘の帰りがこんなに遅くなっても、待たずに眠ってしまうのか。
わかってたけど、やっぱり、ろくな人間じゃないな。
「今、お風呂あたため直すから」
ポン、と肩に手を置かれる。
「一緒に入ろうか。なーんて」
「……うん」
「どうしたの。今夜は、えらく素直だね。いつも僕から逃げようとするのに」