世にも歪な恋物語


 脱衣場にやってくると、男は上機嫌で、服を脱ぎ始めた。


「仲良くしようね。僕たちは、もうすぐ家族になるんだから。でも。今夜のことは、お母さんには絶対に……ナイショだよ?」


 俯きがちに頷いてみせる。


「もしかして、照れてる?」


 年頃の女の子と裸で家族ごっこしたがる男が、果たして正常だろうか。

 そんなわけない。


「怖くなったのかな? 大丈夫だよ。いい子にしていれば、痛いことしないから。ほら。顔、あげて――」


 この異常者が、まぎれもなく、琴センパイの火を弱めている。

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