世にも歪な恋物語
「あぁぁああ゛!?」
まずは、視界を奪う。
「……琴、ちゃ……」
それから無防備な脇腹に、ひと突き。
「ん゛ッ」
いったん抜いて、もういっかい。
さてと。
これでかなりの出血量――致命傷を与えられたけれど。
足も、やっとくか。
「……や゛め……ッ」
「ふぅん。怪物でも血は赤いし。痛み、感じるんだ」
アキレス腱に、ナイフを入れる。
一度で切れそうもないので、何度も、何度も。
「やっぱり、かたいなあ。目からいってよかった」
痛みに悶える男。
抵抗する気力は残っていないらしい。
仮に騒がれたところで、近隣の住民がこの時間にいないことは確認済みだ。
もっとも、見つかったところで、困らないけど。
オレを裁く法なんて、ないでしょ。
「……誰、だ?」
「知る必要ない」
あんた、もうじき死ぬんだし。
「……たす……け……」
やだね。
オレが守りたいのは、彼女だけ。
琴センパイの灯火だけ。
「バイバイ」
彼女とオレの世界から、さっさと消えて。