世にも歪な恋物語


 放課後、部室に向かうとなにかがおかしいことに気づいた。


 部員が戸惑いを隠せない様子で、皆の視線の先には、あの先輩がいたんだ。


 いやいやいや、なんでいるんですか。


「ちょっと。深見(ふかみ)くんが、あんた訪ねて来てんだけど」


 こっちに駆け寄ってくる3年の先輩から耳打ちされる。


「ふーん。これが。君の絵なんだ」

「ちょ……!」


 勝手に見ないでくれませんか。


「なに描いたの」

「……ナイショです」

「油絵だよね。抽象画ってやつ?」

「いちおう」

「すごいね。君がなにか伝えたいものがあるってことが、ひしひしと感じる」 


 とても嬉しい言葉であるが――部員でない人間に面と向かって感想を述べられるのは照れくさい。


「……先輩。わたしに聞きたいことがあるんですよね」

「ああ」

「だったら、わたしからもお願いがあります」

「お願い?」

「先輩を描かせてください。質疑応答してるあいだ」

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