世にも歪な恋物語


 かくして、わたしは、先輩を描くことになった。


 交換条件を持ちかけたのは、もちろん、わたしが先輩を描きたくなったから。


 改めてよく見ると、生きる彫刻かと思う。


 こんな機会滅多とないだろうから、存分に観察させてもらいますよ。


「じっとしていた方がいい?」

「そうですね。できれば」


 今からわたしがやるのは、木炭を使ったデッサンだ。


「それ。鉛筆とは違うの?」

「そりゃあ」


 正面もいいけど、横顔もいいな。

 構図に迷う。

 とはいえ、ここで時間かけるわけにいかない。

 明日もモデルしてくださいなんて、とても頼めないし。

 先輩、受験生だから、それなりに忙しいはずだし!


「どうちがうの」


 細かいことを説明し始めると、短くはないというか。

 熱く語り出してしまいそうなので、グッとこらえ話題を転換する。


「……先輩がわたしに意見を聞きたいことって。別のことでは」

「そのつもりだったんだけど。今は。こっちの方が気になる」

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