世にも歪な恋物語
マイペースすぎるよ、先輩。
「では、木炭なんですけど。初学者はヤナギから始めるのが、いいと聞きます」
「へえ」
「やわらかく、色も乗りやすく、バランス良いので」
「そうなんだ」
先輩は、わたしの話を、退屈せずに聞いてくれた。
実際『コイツ説明下手くそだな』とか思われていたかもしれないけど、少なくともそれを顔に出すことはなくて。
というか先輩って、仮に興味なくなったら、その時点で『もういい』とか言いそうなのに。
ずっと、聞き役に徹してくれた。
「黒いね。全体的に」
「……モデルがいいので。力が入りました」
「もらってもいい?」
「えっ。こんな絵で……よければ」