再会は涙色  ~元カレとの想い溢れる一夜からはじまる物語~
「麻衣」
たった一言。
彼に名前を呼ばれた瞬間、一気に見えていた景色が色づいた。
鮮やかに。本当に一瞬だった。

それまで見て来た、この5年間の景色は、鮮やかな色を失ってセピア色に見えていたことに、はじめて気づいた瞬間。

私は、彼の胸に飛び込んでいた。

何が背を向けるよ。
何がその場から立ち去るよ。

何が・・・。

自分の意志の弱さに後悔しながらも、今だけ。
最後だから。
そう言い訳をしながら、今自分を抱きしめている理久の胸の中で目を閉じる。
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