花の妖精は秘密が多い

「桜河、私服可愛いくない？」

「女の子でもやっていけそう！」

友達に囲まれ、可愛いと口々に褒められて桜河くんは恥ずかしそうにしている。そんなところも可愛くて、クスッと笑ってしまった。

「桜河くん、その服似合ってるよ。そういえば私服見るの初めてだな」

みんなからようやく解放され、どこかグッタリした様子の桜河くんにドキドキしながら声をかけてみる。桜河くんは私に微笑み、「桃ちゃんもその服、似合ってるよ」と返してくれた。頑張っておしゃれした甲斐があったと心の中で喜ぶ。

「お〜い、早くバスに乗れよ」

先生に声をかけられ、私たちは「は〜い」と返事をしながらバスへと移動する。楽しく話しながら歩いていたんだけど、少し気になることがあった。

空を見上げれば、重い印象の曇り空。天気予報で天気が荒れるかもって言っていたけど、雨が降らないといいな……。

そんな願いは虚しく、バスが動き出してから数十分後に雨が降り始めた。