初カレはヤンデレすぎる束縛彼氏
初めて蓮と出会ったのは小学4年生の時だった。
両親の仕事の都合で隣に引っ越してきた蓮はお人形さんのように小さくて可愛くて、弟のように世話を焼いていた。
しかし引っ込み思案な性格だった蓮はなかなかクラスに馴染めず、男子にいじめられてばかりいた。

「女みてーな顔してんな、こいつ」

「蓮くーん、聞こえてまちゅかー?」

当時クラスの中心的存在だった葉山は、肥満児だから体が大きく力も強く、小さくてカワイイと女子にチヤホヤされてる蓮が気に食わないようだった。
それを見兼ねていつも私は葉山にキレていた。

「ちょっと、葉山!」


「あ?何だよブス」


「ブスはテメーだ!!!」


自分より体の大きい男子を次々となぎ倒していたことから、周りに“蓮の保護者”として認識されていた。
そう言われて私も悪い気はしなかったし、それが幼馴染として友達として当たり前のことだと思っていた。

しかし中学を卒業した日、蓮に呼び出された。

「どうしたの?お母さんたち行っちゃうよ?」

式に参加していた私の家族と蓮の家族でお寿司を食べに行こうとしていた時だった。
蓮がちょっと待って、と私だけを引き留めた。
何だかいつもと様子が違う。
とっくのとうに抜かされた身長。可愛かった顔はいつのまにか精悍な顔つきになり、学校内に留まらず他校の女子にまで騒がれる程になった。
高校の進学先も同じで、卒業しても今までと何も変わらないと思っていた。
だけど、どんどん蓮は変わっていって、いつか私のことなんて忘れてしまうんだろうか。
それはちょっとやだな…と思っていたら蓮がずっとこちらを見ていたことに気付く。
初めて見る真剣な顔に思わずドキッとした。

「俺、みちるにずっと言ってなかったことがある」

幼馴染の私にずっと言えないこと?
彼女が出来たとかだろうか。
蓮はモテるから、彼女の一人や二人いても驚かない。
それはずっと覚悟してきたけど、やっぱり今までどおり一緒にいられなくなるのは寂しいな、と思ったその時。


「みちるが好き。俺と付き合ってください」


「え?」


春風が吹いて、桜の花びらが舞う。
視界を真っ白に染めた桜吹雪が過ぎ去り、真っ赤になった蓮の顔が見えた。
私も驚きすぎて変な顔になっていたかもしれない。


「いつから…?」


「ここに引っ越してきた日…かな。みちるが好きで付き合いたいって自覚したのは、ここ最近だけど」


まさかの一目惚れ!?
驚きを隠し切れずそう叫ぶと蓮は更に顔を真っ赤に染めて「うん…」と肯定した。


正直まったくわからなかったし、今までずっと一緒にいたのに気づかないとか自分鈍すぎじゃね?と反省した。


「それで、みちるの返事は?」


「私…は」

この好きが所謂、男女の好きか友達としての好きかどうかわからない。
でも、断ればこのまま蓮は遠くに行ってずっと一緒にいられなくなってしまうような予感がした。


「私も蓮が好き。それが恋人としての好きかどうかは、正直まだわからない…けど」


「幼馴染としてずっと一緒にいたい。それじゃダメかな?」


ずるい提案だと思う。恋人としては無理だけど幼馴染として好きだから一緒にいたい、なんて。


「いいよ」


「ほんと!?」


蓮は笑って受け入れてくれた。
ように見えた。


「高校卒業までに絶対落とすから。俺から逃げられると思うなよ」


ぼそっと耳元で囁かれた不穏な言葉にゾッと背筋が震える。
神様、可愛かった幼馴染がいつのまにか危険なオオカミに成長していたようです…。
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