Office Lady



カタカタとキーボードを打っていると、すっとコーヒーが置かれる。

「はい、どーぞ」

コーヒーを持ってきてくれたハルちゃんに見向きもせず「はい、どーも」とだけ言う。

「まったく・・・先輩も熱心ですよね」
「なにがー?」
「仕事ですよ、仕事!」
「そぉー?」
「そうですよ!」

ハルちゃんはまたお決まりのポーズでビシッ、と私を指さしながら言う。

「だいたい恭子さんは、」
「『だいたい恭子さんは、仕事ばかりやってそれしか目にないから、彼氏が出来ないんですよ!それで仕事を理由にして自分でがんばろうともしない!!こんなんじゃ、実家のお母さんだって泣きますよ!!』・・・でしょ?」
「・・・・・・・・・はい、そうです」

私にセリフを取られて、少し不満そうにするハルちゃん。

「てか、そのセリフもう何回目?」
「78回目です」
「うわっ、数えてたんだ」
「数えてましたよ~」
「へぇ、78回も言われてるんですね。先輩」

隣から憎たらしい奴の声が聞こえてくる。

「悪かったわね、橘」

『橘 海斗』21歳。私の隣の席の若造。
いちいち生意気なことを言ってくる。まさに、天敵。

「悪いとは言ってませんよ?ただ、その間中ずーっと彼氏いなかったんだなぁって」
「むかつく・・・・・・こいつ・・・・」

そのとき、時計の音楽が鳴る。

「やったー!!今日の仕事終わり!!!」
「はーい、お疲れ様~」

喜ぶハルちゃんに冷めた目を向ける。

「恭子さん、これから合コン行きましょう!!」
「行かないってば」
「えー、行きましょうよぉ~」
「行かない」
「行きましょうって!!」
「行かない!!」
「行きましょう!!」
「行かない!!」

言い合いをしている私たち2人を呆れた顔で見る百合。

「何やってんだか・・・」
「じゃ、私帰るから!!」
「え、ちょっと、恭子さーん!!」
「お疲れ様~」

ハルちゃんの声も虚しく、私はさっさと家に帰る。



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