恋人ごっこ幸福論
「…試験勉強そんな困ってんの?」
「え、一応普段から予習復習してるので困ってはないですけど…」
「なんだ、普通に勉強出来るんじゃん。教えてほしい訳でもないのに勉強会する意味ある?1人でやった方が集中出来るし効率いいんじゃね」
スッパリと正論を返されて黙り込む。
別に成績悪い訳でもないし、元来の真面目すぎる性格で試験勉強は結構順調に進んでいるし何もそんな手間は必要ないけれど。
「…ただ、橘先輩と一緒に居る時間が欲しいから、勉強会したくって」
正直に伝えるしかない。
個人的で不純な動機を隠したって、どうせなんとなくばれてしまうだろうから嘘偽りなく堂々と言い訳すると、橘先輩は溜息をつく。
「そんなことだろうと思った」
「う…そんな暇あるなら試験のこともっと考えた方がいいのは分かってるんですけど…」
「別にそこまで言ってねえだろ」
「で、でも今面倒だなって思ってたんじゃ」
「まあちょっとはあるけど」
やっぱりそうだよね、じゃあ駄目かな。
今回は試験勉強の方が大事だしきっぱり諦めよう。橘先輩が勉強している姿も見てみたかったけれど、別の機会にしようと思っていると。
「じゃあ日曜にする?」
「え、」
「日曜に勉強会するかって言ってんだよ」
ぶっきらぼうに告げる彼の言葉を頭の中で反復して、理解する。