恋人ごっこ幸福論
「勉強会してくれるんですか!」
「お前がしたいつったんだろーが」
「いや今のは断られる流れかと思って…」
「別にそんな言い方してないんだけど」
不思議そうにそう言う彼は、本当にそのつもりはなかったみたいだ。
肯定してるのかそうでないのか、不器用な彼の考えを100%理解するのはまだ難しそうだ。
「それなら…日曜にします」
「了解。じゃ会計行ってこい」
「はい!あ、勉強する場所なんですけど」
「結局会計後回しかよ」
「日曜日祖父は仕事で居ないので、よかったら家でしませんか?」
「え?」
場所の提案をすると、ぴたっと彼の動きが止まる。
え、私変なこと言ったかな。目を見開く彼の反応に不安を感じていると、確認するように質問してくる。
「じいちゃん居ないってことは日曜お前しか居ないんだよな」
「はい」
「2人だけ?」
「はい」
今の提案では分かりにくかったのかな、質問してくる彼の意図が分からず肯定する以外の返事を出来ない。
一方、それだけの解答をされた張本人はただ黙ってそう答えた私を見つめる。少し呆れたように見える彼が暫し間を置いてから私の肩にポン、と手を置く。
「お前…気を付けろよ」
「?何をですか」
「それは自分で考えろ」
「ええ…」
何の話をしているのかさっぱり分からないから聞いたのに、つい不満の声が漏れる。
「ちなみに…場所は家で、問題ないでしょうか」
「ああそれでいいそれでいい、分かったからとにかくレジ行けって。話は後でも出来るだろ」
「は〜い、じゃあ決まりですね」
適当に返事して急かす彼の言うことに従ってレジの方へ足を向かわせる。
結局なんだったんだろう、意味は分からなかったけれど2人で休みの日一緒に過ごせる喜びの方が大きくて、そんなことなど忘れてしまっていた。