恋人ごっこ幸福論




「…ドキドキしてますか?」



これで意識してくれなかったらまた私がドキドキしただけになっちゃう。

ちらっと視線だけ彼の顔を見ようと動かしてみると、彼もトンと頭を私に持たれかけさせてくる。


顔も、近い。

たったそれだけのことなのに、単純な私はまたドクンと心臓が音を立てている。



「んー悪くはない」



それってどういう意味なんだ、まさか頭の置き場所としては居心地が悪くないって意味じゃないだろうか。



「あの、全く質問の回答になってないのですが」

「んなこと言われたって、そういう感情がよくわかんないんだから仕方ないだろ。神山がこういうことに喜んでるってのは分かるけど」

「そうかもしれないけど…」


でも何かしら感じてないわけないのでは、ただ質問をはぐらかされただけな気がしてすっきりしない。


「だけど」

「わ、!」



ぎゅっと引き寄せられる力が強くなって、ほとんど抱き締められるような形になる。



「なんかこうやって触れてるのは悪くない…むしろ居心地良い気はしてる」

「へ…!?」



思わず顔だけ上げて隣で寄りかかる彼の顔を見る。

少し照れたような困ったような表情の彼は、からかっているわけでもないようで。



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