恋人ごっこ幸福論
「悪くはない、ってそういう意味だよ」
「そ、それってどういう気持ちですか」
「分かんないって。でも俺はお前に触るのも2人だけで居るのもなんか悪い気しねえの」
「そうなんだ…」
それが意識してる、ってことなんじゃないの?って言葉に出そうになったけれど、我慢した。
私の自惚れかもしれないし、もし本当にそうなら彼自身で気づいてほしいから。
胸が幸福感でいっぱいで、キュンキュンして、苦しい。なのに凄く嬉しい。
寄り添って感じる体温と、彼の思いがけない気持ちに現実味が感じられないけれど、もっとこうしていたい。ずっとこのままでいられたらいいのにとさえ思う。
「…3人が帰ってくるまでこうしててもいいですか」
「ん、いいよ」
「やった」
ふふ、と嬉しくてつい笑みが零れた。
傍にいるとドキドキして壊れてしまいそうなのに、もっとこうしていたいと思うことがあるなんて。
きっとこうしていられるのはあと数分だろう、それでも私にとってその時間は今日の中でとても長く、充実した時間になったのだ。